自然科学書協会タイトル

謹 賀 新 年
〜2016年年頭にあたってのご挨拶〜

一般社団法人 自然科学書協会
理事長 金原 優 

理事長 金原 優


 2016年を迎え、出版関係各位、また読者・執筆者の先生方におかれましては新たな気持で新年を迎えられたことと思います。出版物の売上は1996年をピークに18年連続して下降しています。電子出版物も徐々に市場に浸透してきていますが、紙媒体出版物の売上減少を補うには程遠い状況です。自然科学系の専門書も例外ではなく、研究書、教科書、専門雑誌といった全ての出版分野で前年実績すら確保できない状況にあります。
 こういった出版物売上の低迷には様々な背景があるのでしょうが、インターネットで求める情報を検索し、必要とする情報のみを部分利用することができる制度が社会的に整った現在、出版物を事前に購入しておかなくても済んでしまう状況に変わってしまったことは出版界にとって大きな変化です。しかし、インターネットは既に情報伝達には欠かせない手段であり、出版界もインターネットによるマイナスばかり憂いていないでその効果を最大限に利用すべき立場にあります。自然科学系の専門書誌の発行と流通には電子配信は不可欠です。膨大な情報の中から読者が必要とする情報を瞬時に検索し提供するシステムを出版社が自ら構築し、必要かつ十分に市場に浸透させる出版業務を積極的に展開しなければ出版社としての目的が果たせません。
 利用者の要望に応え、同時に出版社の利益も確保しながら出版の創造サイクルを継続させるためには、著作権の保護と利用・運用のルールを確立することが重要です。電子的な情報は瞬時に複製され、ネットで遠隔地に伝達されてしまいます。適正な著作権保護とその読者と市場に対する啓蒙活動と周知活動が重要です。
 懸案であった消費税の軽減制度は当面食料品と宅配新聞のみということになりました。書籍と雑誌については継続検討ということになっていますが、今後の政府における対応と出版界内部における有害図書の線引きが重要課題です。自然科学系の専門書は日本の科学情報力を高めるためには必要不可欠なものであり、国民の食と同等に重要なものであることは言うまでもありません。医療費に対する消費税非課税問題も含め、自然科学書協会は日本の科学と国民の生命を守るために必要な消費税の軽減あるいは非課税措置が実現するよう今後も継続して関係団体と連携していかなければなりません。
 自然科学書協会は今年も販売・出展、著作・出版権、研修、広報、総務の各委員会ならびに税制・再販流通特別委員会の委員会を活性化させ、専門書に特有の問題に対して積極的に取り組んで参ります。具体的には、国内外で開催される各種のブックフェアにおける出版物展示ならびに全国主要書店との共催展示会の開催、出版物の複写・複製ならびに著作権制度や侵害問題への取組み、自然科学領域における一般読者向けの講演会やセミナーならびに読者が気軽に参加できる書店店頭におけるサイエンスカフェ等の企画と運営等を行って参ります。
 自然科学情報に国境や地域性はありません。自然科学書協会はその会員を通じて世界の自然科学専門情報を日本国内に伝え、日本の自然科学専門情報を世界に伝えます。世界中の研究者が専門情報を適切に利用し合うことによって世界の科学知識は高まり、広まります。日本語という壁を乗り越え、自然科学領域の情報が世界的に利用される体制を作り上げなければなりません。自然科学書協会はその役割も果たしていきたいと思います。
 自然科学書協会は今年創立70周年を迎えます。この70年に自然科学書協会は日本の科学技術の発展と共に歩んできました。今後もその責任を自覚し、自然科学の専門情報が幅広く流通するために最大限の努力を重ねます。関係各位のご指導とご協力をお願い申し上げます。




         

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