講師:柳田邦男(ノンフィクション作家,評論家)
日時:2017年5月13日(土)14:30~16:00
場所:日本出版クラブ会館・鳳凰の間(東京都)
後援:文部科学省
受講料:無料
定員:150名(応募者多数の場合は抽選)
申込み締切:2017年4月21日(金)
 ※申込みの受付は終了しました※
主催:一般社団法人 自然科学書協会
後援:文部科学省 問合せ先:一般社団法人 自然科学書協会事務局
電子メール:sec@nspa.or.jp
電話:03-5577-6301(火・木・金のみ)

※講演会は終了しました.お足元の悪い中ご参加いただいた皆様,大変にありがとうございました※


創立70周年記念 自然科学書協会 講演会2017

「文学としての科学書」

講師:柳田邦男(ノンフィクション作家、評論家)

【講演趣旨】
 現代の人間は、否応なしに科学技術の成果を取り入れた生活用具や通信機器や交通機関や社会システムの中で生活し、仕事をしている。人間を描く文学でさえ、そういう科学技術の知識や論理的思考から逃げてはいられない。私が一九七一年に発表した『マッハの恐怖』は、ノンフィクション・ジャンルあるいは記録文学のジャンルにおいて、そういう意識を前面に出して書いた作品だった。
 一方、伝統的な科学啓蒙書や科学者の伝記作品においては、科学の理論や技術の理論についての解説的要素が物語的に語られることで、若者や一般読者の興味を引いてきたが、科学・技術の急速な進歩によって、分子生物学や遺伝子研究や高度なコンピュータ技術などの先端的な科学・技術について、若者や一般読者が知的興奮を覚えるようなドラマ性を持った叙述をすることが、容易ではなくなっている。それは、科学・技術の啓蒙書の分野における課題になっていると言えるだろう。
 もう一つ、科学者が書くエッセイというジャンルがある。往年の物理学者・寺田寅彦は、エッセイの名文家として、そのエッセイ集は今でも読み継がれているが、生命の操作や宇宙の謎など最先端の科学研究に挑んでいる現代の科学者たちが、人間や時代や研究の未来などについて、どのように考えているのか、エッセイスタイルで書いてほしいものだ。
 まさに科学技術文明の真っ只中にいる今こそ、科学書のジャンルに期待される多岐にわたる課題に、出版界は新機軸を打ち出してほしい。
 以上のような問題意識について、私が親しんできた科学・技術の分野の本を引用しつつ、語ってみたい。

【講師プロフィール】
柳田邦男(やなぎだくにお)

 1936年(昭和11年)栃木県生まれ。1960年 東京大学経済学部卒業。NHK記者として原爆被爆者問題、災害、事故、学術などの報道を14年担当してから、作家活動に入る。現代人の「いのちの危機」をテーマに、病気、障害、災害、事故、公害などに関するドキュメント作品や評論を半世紀にわたって執筆。  最近は、終末期医療や死生観、在宅医療に焦点を合わせて執筆に力を入れるとともに、経済成長にシフトした地方再生もさることながら、心豊かな暮らしや安心して子育てのできるまちづくりを目指す「知の地域創造」の取り組みに力を入れている。また、子どもの心と人間形成にゆがみをもたらすネット社会の進展に危機感を強め、絵本の読み聞かせの啓発活動に東奔西走している。1990年 がん問題への継続的執筆活動に対し日本対がん協会賞、1995年『犠牲わが息子・脳死の11日』の執筆とノンフィクション・ジャンルの確立への貢献で菊池寛賞、2002年航空安全思想の普及で国土交通大臣特別表彰など受賞多数。 主な著書に『マッハの恐怖』(新潮社)、『ガン回廊の朝』(講談社)、『「死の医学」への日記』(新潮社)、『新・がん50人の勇気』(文藝春秋)、『「想定外」の罠』(文藝春秋)、『終わらない原発事故と「日本病」』(新潮社)などがある。絵本の翻訳も『だいじょうぶだよ、ゾウさん』(文渓堂)、『ヤクーバとライオン』(講談社)、『コルチャック先生:子どもの権利条約の父』(講談社)など注目作品が多い。


> 講演会「文学としての科学書」を聴いて(松浦晋也)